中古マンションの寿命が心配です
「中古マンションで暮らすことはいいんだけど、マンションの寿命って何年位なんだろうか・・・?」
そんな不安を感じている方もいらっしゃるかもしれませんね。いろいろと調べてみると歴史も浅いので非常に曖昧な要素も多いのが実際のところ。
そこで国土交通省の資料を基にできるだけ客観的に考えてみました。結論から言えば、概ね100年以上の寿命はあると考えても差し支えないと思います。
マンションの建替え状況はどうなってるか?
マンション自体の歴史はそんなに古くはありません。そもそも一番古いマンションってまだ残っているのだろうか?
いろいろ調べてみると1953年に東京都が分譲した「宮益坂ビルディング」がどうやら初の分譲マンションのようです。1階が店舗、2~4階がオフィス、5~11階からが住戸で70戸ほど。
初の民間分譲で1956年竣工の「四谷コーポラス」は5階建て28戸のメゾネットタイプと少し小ぶり。
実はどちらも建て替えのために解体されています。宮益坂ビルディングは2016年に解体されたので築63年、四谷コーポラスは2017年に解体なのでこちらは築61年。
となると60年程度が一つの寿命・・・?ただ、コンクリート建築物そのものが老朽化で倒壊の危険がある、という意味で建て替えとなったのではなく設備配管等の老朽化や耐震性への懸念ということが理由に挙げられていました。
宮益坂ビルディングは住戸部分の多くがオフィス利用に転用されたりという利用形態の変化もあるようですし、単純にコンクリート建造物としての寿命で解体するというわけではないようですね。
実際のマンション建替えの実施状況がどうなっているのかがわかる資料を見てみましょう。(出典:国土交通省「マンション建替えの実施状況(平成29年4月1日時点)(PDF)」より)
上の資料によると平成29年時点での建替えの累計は実施準備中のものも含めても全国で「268棟」。ここで築30年程度で建て替える事例は特殊だと思いますから築40年以上の物件を建て替え対象として仮定してみます。
日本に築40年以上のマンションが何棟あるのかは残念ながら資料を探しきれませんでしたが、三大都市圏の築40年以上の「棟数」は約1.7万棟ほどのようです。
割合としては268÷17,000で約1.6%ほど。三大都市圏だけで考えた時なので、日本全国で考えればもう少し割合は小さくなると思いますが、それほど多くはない感じですね。
ただ、実際のところ、本来なら建て替えなければならないようなマンションでも、建替え原資の積み立てがなければ費用をどう工面するのかという問題もあるし、住んでいる人の考え方によっても意見調整が難しいなど、建替えは必要だけれど様々な事情で困難なだけかもしれません。
それにこれは建替えだけの資料で、単純に解体したマンションという場合のデータは含んでないと思われるので厳密にマンションの寿命とイコールではないですし、マンションの歴史が1950年代からとまだ浅いので、建替え自体の具体的データが少ないのも仕方がないところ。
いろいろな見解があるとは思いますが、以上を踏まえると、マンションの構造自体の寿命は少なくとも多くは60年以上程度はあると考えるのはそれほど間違った考え方ではないと考えます。このあたりをもう少し詳しく検討していきます。
修繕計画の実態とマンション自体の耐久性
昔と違って施工技術や性能の向上による寿命の延びはあるでしょうし、修繕計画が明確でなくてまともにメンテナンスがされていないマンションと、維持管理が適切にされてきたマンション、もしくはちゃんと長期修繕計画が作成されているマンションとを比較すればその劣化状況にも差は出てくるでしょう。
とすれば、昔よりも寿命は延びていると考えることには無理はないと思います。実際、長期修繕計画を作成しているマンションはかなり多くなっています(下記参照。出典:国土交通省「平成25年度マンション総合調査結果からみたマンションの居住と管理の現状」3ページ目)。
ここで、建物自体の基本的な寿命自体がどれくらいなのかを示す資料としては下記の「鉄筋コンクリート造の寿命に係る既往の研究例」という資料があるのでこちらも見てみましょう(出典:国土交通省『「中古住宅流通促進・活用に関する研究会」報告書 取りまとめ後の取組紹介』の9ページ目)。
一番下の表にある固定資産台帳の滅失データを基にした平均寿命が68年となってます。お、これは先の「宮益坂ビルディング」や「四谷コーポラス」の寿命とも近い。
ただ固定資産台帳の滅失データが基になっているということは、単純な鉄筋コンクリート造としての寿命とはまた違う・・・。
「鉄筋コンクリート造」の耐用年数あるいは物理的な寿命を扱った調査では100~150年となっている。う~ん・・・これに実際に該当する事例はないのかな・・・?
そこで「日本で最初の鉄筋コンクリート造」を調べてみると・・・事務所ビルとして現存していました。KN日本大通ビル(旧三井物産横浜ビルです。1911年に竣工で関東大震災にも耐えたという歴史ある建築物です。
マンションではなくて事務所ビル、というのがポイントですね。マンションにつきものの設備更新による経済的負担も小さいこともあるのでちゃんとメンテナンスされてきたのでしょう。それでも100~150年という鉄筋コンクリート造の耐用年数を裏付ける貴重な実例ではあります。
マンションと同じ利用の仕方ではないし、メンテナンスの仕方も違っていたでしょうから、日本で築100年以上の鉄筋コンクリート建造物が一つはある、という事例をもってマンションの寿命は100年以上ある、というのはちょっと言いすぎな気もします。
ただ、そもそも初の分譲マンションが1953年に建ったというまだ歴史が浅い建築物なわけですし、研究者たちの見解や「鉄筋コンクリート造」という同じ構造の事例を基に寿命を推定するしかないのかなと思います。
以上をふまえて、私たちとしてはマンションの構造自体には100年程度の耐久性はあると考えています。もちろん、適切な管理がなされていることが前提です。
中古マンションの寿命のまとめ
以下ここまでの内容をまとめました。
①最初期のマンションでも60年以上利用できており、耐久性が原因で解体したわけではない。
②9割近くのマンションが修繕計画を作成。適切に管理をする姿勢なので寿命が延びていく傾向にある。
③配管設備はそこまでもたないので更新が必要。
④長期修繕計画がある、またはこれまでしっかりと実施していれば耐久性に問題はないと言えそう。
⑤耐久性の調査、研究からは100年以上という見解。実際に100年もっている実例(マンションではないが)もある。
以上によりマンションの寿命、耐久性としては適切な管理をしていれば100年程度はあると考えます。分析の仕方に多少難があるかもしれませんが、少なくとも資料やデータを基として推論ですから大きく偏ってはいないと思います。
中古マンション購入を検討する上での参考となれば幸いです。