昭和区八事富士見 J邸マンションリノベーション
2019年1月竣工
物件概要/1983年築/67㎡
家具好きのオーナーさん。古いものから新しいものまで、いろんな家具が住まいに独特の雰囲気を加えてくれています。TVもほとんど見ず、一般的には暗めの空間の方が落ち着く、とのことでした。
そうしたライフスタイルを踏まえて計画した今回のプランは居場所や家具の配置、過ごし方をいつも以上に重視しています。
素材感を大切にし、職人の手仕事へのリスペクトも強いオーナーさんなので使用する素材や、畳、塗り壁といった点でも通常とはちょっと違う素材でまとめています。
今回、一番特徴的なのが、「暖炉スペース」。本当の暖炉ではなく、エコスマートファイヤというバイオエタノールを燃料にした設置型の暖炉を置くためのスペースを暖炉に見立てています。
暖炉部分は緩やかなアール壁として柔らかな印象に。
小上がりのタタミスペースには縁側的な板間がつながっており、それは暖炉と同じように斜めにして空間的な広がりを感じるようにもしています。
縁側は室内干しにもなっていますが、それをゆるく目隠しするために、格子戸を設けています。通常は障子を貼ると思いますが、何も貼らない素通しの格子戸。
奇をてらうことを目的としたのではなく、受ける印象や空間の使い方をじっくりと考えて出したものです。そうした手法が素敵な家具や照明とうまく調和しているのがこの住まいの魅力だと思います。
右が暖炉スペース。バイオエタノールを使った暖房器具「エコスマートファイヤ」が設置されている。円形の置き型タイプで、中央から火が揺らめきます。暖房能力をそれほど期待していたわけではないですが、意外にもなかなか暖かい。
暖炉スペースは床を少し下げてウィルトンカーペット張り。濃い色味でグッと締まります。暖炉スペースは九一漆喰仕上げ。端部を円形にして柔らかい印象にしてます。
南は縁側のような空間。室内干しスペースも兼ねてます。幅広の格子戸にすることで洗濯物の印象を弱めつつ、光もちゃんと入るようにしています。
区切らずに開放的な小上がり畳スペースは寝室兼用。栗床の舞台には、桧チップを心材に土佐イ草を使用した畳を敷き込みました。品のいい栗が、カーペットと畳をうまくつなげてくれてます。部屋の隅のペンダント照明はアソビゴコロ。
寝室兼用の畳スペースには置き型の布団収納。杉材で製作。天板部分はスノコ状にして湿気を逃がします。
収納部は布団が出し入れしやすいようにしたマグネット式の板戸です。
ダイニング、というよりは第二リビングというようなスペース。正面には1960年代くらいのデンマーク製の机とイームズのシェルチェア。古く、味わいのある家具が好きなオーナーさんです。
ダイニングには丸テーブル。格子戸が光を柔らかくしてくれるので、ただ明るい、という空間ではなく落ち着いた雰囲気になります。
ダイニングには脱衣室へとつながる引き戸があります。人の動きや、家具配置を踏まえて計画しているため、食事のスペース、というだけではない空間です。
奥にはポリカはめ込みの引き戸。北側にあるサッシの明かりが入り込んで廊下もほどよく明るい。
壁に向かったキッチン配置。背面には飾りも兼ねたオープンなカウンター。
キッチン面材は栗。キッチン奥は洗面スペースで、突き当たりがトイレ。曲がると玄関へと抜ける回遊動線です。
写真ではわからないですが、洗面の正面壁は漆喰の磨き仕上げ。水ハジキもいいですが、タイル張りとは違ったシンプルさがあって、栗のカウンターとも相性がいいですね。
玄関入ってすぐの廊下。右の壁は収納スペースですが、上部の間接照明で塗り壁の表情が強く出てます。
玄関土間スペースは墨入りモルタル仕上げ。すっきりと引き締まります。
暖炉スペースヨコの壁には昔ながらの箒(ほうき)とはたき。ほっこりしますね。
リビングのスタンド照明といくつかの置き型タイプだけの照明計画。明るさではなく、心地のいい「暗さ」を好むオーナーさんです。一般的な計画ではありませんが、非常に落ち着きます。
ダイニングもリビングと同じような明るさですが、キッチン部分は作業に支障がないように通常の明るさで。明るくすることは簡単ですが、こういう手法があることを知ると、住まいの居心地が別次元になります。