マンションリノベーションの収納計画あれこれ

マンションの収納計画のポイントは「広さ」ではない

設計の仲田です!

マンションの暮らしにくさの一つが収納量の少なさ。せっかくリノベーションをするなら収納量はたっぷりとりたいところです。

でもただ単に広い納戸を計画してもマンションの場合にはうまくいきません。

使いやすくて収納量もしっかりと確保するために、どんな方向性で考えたらいいのかをまとめてみました。

納戸型収納の問題点

マンションは戸建てと比べれば比較的コンパクトですから、広く計画したらLDKのスペースが小さくなってしまいます。

例えば下のような計画。4.5畳の大きさがあります。

でも、図の中にもあるように、無駄なスペースがたくさんあります。

結局、モノを使う場合、その前に立って出し入れをするわけですから、そうした動きも考慮する必要があります。

下手な収納計画はそこが全然配慮されていません。

4.5畳の収納スペースと聞くだけで何でも収納できてしまうイメージになりますが、広くて大きな収納って実は無駄が出やすいんです。

本当に必要な広さなのか?を冷静に確認することが大事です。

 

ウォークインクローゼットの基本形

住まいの中で一番必要なスペースが衣類の収納です。新築マンションではウォークインクローゼット型が増えてる感じですね。

ただ、中途半端な大きさでL型で利用したりと、やはり無駄なスペースも多い。

ウォークインクローゼット型の収納で、シンプルで効率がいいパターンの一つが下記。

 

壁の両サイドに衣類をかけて、真ん中が通路になってます。大きさは約2.7畳。先ほどの4.5畳型と比べて2畳弱も小さいのに、収納量はそれほど変わりません。

「小さくて使いにくいんじゃないの?」という方もいるかもですが、これ、実際のマンションリノベーションで採用した幅(450+600+450=1500)です。

実は冒頭の写真がそれ。奥行きは2mくらいなのでこの図ほどの長さはないですが、全然問題なく利用できていますし、かなりの容量が収納できます。

4.5畳と2.7畳と大きく違うのに、収納量があまり変わらない。

基本的に収納って空間の大きさではなく、壁の長さを確保することが大事なんです。

 

収納するモノによって奥行を変える

収納時に奥行が欲しいのは布団です。有効寸法としては最低でも75cm程度は欲しいところ。できたら80cm以上あるといいですね。

ちなみに他社さんの事例見学の際、奥行が70cmの布団収納があったんですが、布団が出っ張ってしまって、引き戸に干渉することがあるので注意が必要です。

また布団は出し入れの際に開口幅が110cm以上ないと出し入れがしにくいのでそこも要注意です。

今はベッドの方も多いので布団収納が必要ない方もいると思いますが、であればなおさら、奥行はそんなに必要がないわけです。

なので、昔の和室の押入みたいな収納計画をしても無駄ですし、使いにくくなります。

 

キッチン周りの収納としてはキッチンの背面にカウンター収納を計画することが多いです。

一般的に多いのは40~45cm程度ですが、これは使う人の収納の仕方、計画の仕方でいろいろです。

下の写真はカウンター奥行が60cmのもの。奥行きが深いので、引出しが出る量も多くなります。当然収納量も増えますね。

なおキッチン側のスペースや通路幅などとの兼ね合いもあるし、物件の状況もあるので単純に大きくすればいいというものではないです。

 

その他、掃除機、扇風機など少しボリュームがあるものは45cmくらいは欲しいですね。

日常生活の細かなモノなら30cmもしくはそれ以下でも十分だったりします。

写真はキッチン裏側に設けたパントリースペース。家事室的に使いつつ、日常の細かいものも収納できるオープンな可動棚収納です。奥行きは30cm程度。

生活に関わるモノは意外と細かい

生活に関わるものって本当にいろいろです。

郵便物、薬、
スマホ等の充電機器や付属するもの、
掃除機、扇風機など電化製品とその説明書、
パソコンや関連の機器、
新聞・雑誌類、
筆記具、はさみ等の文房具類、
子供に関する様々なもの(これが一番散らかる!)、
学校からの連絡物、

・・・などなど、人によってもまだまだいろいろあると思いますが、細かなものがいろいろたくさんあります。

奥行は小さくてもいいので、そういう様々なものを収納できるスペースがリビング周りなどにないと、カラーBOXに代表されるようなチープな収納をリビングの隅に置く羽目になりますからここはしっかりと考えることが大事。

使いやすさを考慮していろいろな工夫をして、すっきりと見せるようにしたい。無印のラタン収納を使う提案もよくしてます。

いろんなバリエーションがある無印のラタン。引出みたいにも使えて便利です。

LDKに設けたオープン棚収納の例。ラタンを置けばすっきりと収納ができる。出し入れしやすいが、見せたくない場合は扉を付けて隠す方もいます。

置き家具の事例。無印のラタンが入るサイズとして両側から引出のように使う。生活の小物のごちゃごちゃを少なくします。

その他、ここでは解説しませんが、キッチン周りには小さくても食品庫的なスペースも必要だと思います。食品の買い置きを特売日などでたくさん買う人なんかはスペースもそれなりにたくさん必要でしょうね(笑)。

また家電類やゴミ箱なども関わってきますから、そういうスペースの配慮も必要なんですが、新築マンションの間取りなんかを見てるとキッチン周りの計画が実に弱いものが多い。

リノベーションではそういう使いにくさを改善できるのが魅力です。

 

まとめ:マンションでは動線上に収納を設けるのがコツ

まとめると、基本的には衣類はまとめて収納し、収納量は部屋のボリュームではなくて、長さで確保できているかを判断します。

また使う場所の近い所に、適切な収納スペースを確保するのが使いやすいし、整理もしやすいですね。

そして、できる限り効率よく使うために、動線上に収納を計画するのがいいです。

たんなる通路ではなく、収納の中を通り抜けるような計画になっているので、空間の利用に無駄がなくなるんですね。

また回遊動線にもなりやすいので、家全体がより広く使えるようになるのも魅力です。

単に「収納量・面積」で考えるとうまくいきません。

マンションという住まいの特徴を踏まえて、暮らすということをじっくりと考えて収納を考えるととても暮らしやすい住まいになります。