マンションリノベーションにかかる費用は物件購入も含めていくらかかる?
こんにちは。設計の仲田です。最近はご相談が本当に増えてるんですが、だいたい2つのコトに絞られます。
一つ目が全体の流れがよくわからない、というもの。
「中古マンションを買ってからリノベーション会社を探す?」
「最初にどこに相談すればいいのか?」
「どういうタイミングでお金を支払えばいい?」
など非常にモヤモヤしている方が多いです。
全体の流れについては下記ブログが参考になるので気になる方は参考までにご覧ください。
参考情報1『ワンストップリノベーションなら本当にいい住まいをつくることができる?』
そしてもう一つの悩みがリノベーションって、物件購入費も含めて、結局、全部でいくらかかるの?です。
中古マンションの購入と合わせて、最終的にいくら必要になるのか?こちらもよくわからない方が多いと思います。
実は中古マンションリノベーションは単純な足し算で考えるのではなく、物件の選び方から考えないとうまくいかない可能性が高いんです。
以下、詳しく解説していきます。
目次
リノベーション費用だけを考えても予算は把握できません
中古マンションの間取りはそのままに、床、壁、天井はきれいやりかえて、キッチンなどの設備も新しく交換するリフォームであれば話は簡単。
2~3社程度の会社に相談すれば、だいたいの価格がわかると思います。
ただリノベーションを考えている方は、自分好みの内装はもちろん、間取りの変更も含めた快適で暮らしやすい住まいにしたいはずですよね?
あまりに予算が少なければ思う通りにはできないこともたぶん、理解していると思います。
けれど、一口にリノベーションと言っても、会社によっても中身が全然違います。
マンションって独特の暮らしにくさがあるんですが、その暮らしにくさをどういうレベルで解決するのか?によっても工事費は大きく変わります。
参考情報2『暮らしてから後悔しないためにも絶対にしておくべき工事とは?』
そうした工事内容の違いに加えて、物件条件の違いによっても工事費が変わります。
例えば物件自体が同じ面積、同じ価格であったとしても、角部屋や最上階ではリノベーション費用は違ってきます。
もしかりに「費用は面積で変わるだけなんで、屋上でも角部屋でも変わらないですよ!」っていう会社があったら、要注意です。
たぶん、暮らし始めてから、しまった、と後悔することになります・・・
またあまり注目されてませんが、毎月の修繕積立金と管理費も物件によってかなり幅があります。
毎月発生する費用なので借入金額の設定にも大きく影響するはず。
にもかかわらずこうした費用は軽視されがちなのですが、やはり物件選びの際に同時に考慮しないと、意味がありません。
こういうことを踏まえればリノベーション費用というのはそもそも単独で検討するものではないんです。
つまり物件の検討も含めてリノベーションを計画しないと、過剰な負担となりかねない・・・
では、そうならないためにどうしたらいいのでしょう?
総予算の設定の仕方
まずは過剰な負担とならない総予算を設定することからはじめます。ポイントは3つだけ。
・無理なく毎月返済できる金額はいくらか?
・それをどれくらいの期間支払うのか?
・用意できる自己資金はいくらか?
この3つを決めれば、総予算が設定できますよね。
ここで注意をしたいのは、マンションの場合、住宅ローンとは別に「修繕積立金」「管理費」「駐車場費」の3つが毎月かかるということ。
なのでこれらも含めた「毎月の住居費」がいくらまでならいいのかを検討します。
例えば毎月の住居費を10万円までなら大丈夫とします。
仮に「修繕積立金」「管理費」「駐車場費」がそれぞれ1万円ずつとして合計3万円を考慮しておきます。
つまり残りの7万円が毎月支払える金額です。7万円で借りられる金額はいくらになるのか?
金利と返済年数によって変わりますので以下にまとめてみました。
なお下の表は1万円の場合をまとめたものです。借入額の増減の際の参考にしていただければ。
金利と借入の期間の設定は、実際には借入する予定の金融機関の条件によります。
基本的には中古物件+諸経費+リノベーションの各費用をまとめて借入します。
さて、借入期間は基本的に自由ではありますが、最大でも80歳までに完済する形が上限のはずです。
個人的には返済期間は長くしたほうが、毎月の負担が少なくなるので生活は楽になると思っていますが、もちろん、何が正解なのかは人によっても変わりますね。
金利が 0.7~1.0% で推移すると設定し、返済期間を35年とすれば、毎月7万円の返済でだいたい2500万円は借りられることになります。
自己資金が仮に500万円あるとしたら、合計で3000万円が自分で準備できる総予算になります。
中古マンションの購入費とリノベーションの費用は「同時に」考える
大きさを考える
さて用意した3000万円で、物件探しとリノベーションをするわけですが、どう設定すれば成り立つか?
まず、予算に一番大きく関わるのが大きさです。リノベーションの費用も中古物件の購入費も、面積が大きくなれば基本的には高くなります。
大きい方が間取りの計画がゆったりとできますし、希望も満たしやすい。
ただ、予算が成り立たなくなる可能性もある。
それを踏まえるとまずは具体的なリノベーションプラン事例を見て、自分たちにはどれくらいの大きさが必要なのか?を検討する必要があります。
例えば下記は70㎡の物件のリノベーションプラン事例です。
こちらの家族は将来4人でも住めることが基本的なご要望でした。こうした実例をいくつか比較します。その上で、
「70㎡で十分可能いける!」
「60㎡もあれば十分だ」
「80㎡はないと無理だね」
という感じで自分たちにとっての必要な大きさ、適切な大きさがどれくらいなのかを確かめるんです。
でなければ必要以上に大きくなったり、あるいは小さくなってしまうかもしれません。ここは大事なポイントですね。
ここで挙げた70㎡で4人家族は一つの目安です。
要望によっては2人で80㎡ないと成り立たない場合もあります。
大きさの設定はなかなか難しいので、やはり、まずはリノベーション会社に相談をすべきですね。
営業的な説明で申し訳ないですが、でもやはりそれが一番いい方法です。
予算の枠組みと物件選び、そしてリノベーションの方向性まで含めて総合的に住まいづくりをプロデュースするためには、やはり専門的な知識と経験に頼って頂いたほうがいいのです。
リノベーションの費用と購入費を同時に検討する具体的な方法
住まいの大きさの検討ができたら物件を調べるんですが、そのためには物件情報とリノベーション費用を同時に検討できるまとめ表を作成するのがいいです。
以前から物件のまとめ表は提供していましたが、今回、予算検討がしやすいように改良しました。
物件の価格と大きさを入力するだけで、中古物件の購入も含めたリノベーションにかかる総費用がそれなりの精度で把握できます。
下記からメールアドレスだけを登録してください。自動返信メールが届きます。データのダウンロードと、使い方のカンタンな説明がついてます。
なおスマホでは操作が難しいか、できないかもしれませんのでパソコンで利用した方がよいと思います。
『中古マンション物件まとめ表』のデータのダウンロードはこちら!
このとき、駅から徒歩〇分とか、自分たちが検討するのに必要な情報や、築年数や管理費など、必要な情報も一緒に入力します。
すると、条件の違いによって価格にどういう差が出るのかがだんだんとわかってきます。
いわゆる相場観というもので、これがないと、実際に良さそうな物件が出たとしても購入する決断が素早くできません。
中古マンションでは必ず自分たちと同じ条件で探している人がいます。だから決断が早くできないとなかなか購入できません。
なんだか急いで決断して早く買え!っていうアドバイスですからイヤなんですが、事実、過去に何回もそういうことに遭遇してきたので・・・(;^_^A
いずれにしても、相場観を養うまとめ表への入力は是非して欲しいです。たぶん2~30件ほどチェックすると、傾向が見えてきます。集中すれば意外と時間もかかりませんし。
ただスマホだとさすがに時間がかかるのでパソコンの方がいいでしょうね。
なお価格チェックをするのにおススメのサイトが「中古マンションレビュー」というサイトです。
無料で会員登録をすると、過去の売買実績もわかりますし、高めか安めなのかもわかりますから、自分の相場観と合わせてチェックすることで、より安心できます。
予算を超えても負担は増えないが、予算以内でも負担が増えることがある?
まとめ表で大事な項目が、毎月かかる「修繕積立金」「管理費」「駐車場費」の3つの諸経費の扱いです。
例えば今回の事例では、総額3,000万円で、管理費等の予算は30,000円として検討してきました。
かりに管理費等の合計が27,000円の物件だと3,000円余裕ができます。
となると購入費等を含めた総予算が3100万円くらいで設定予算を超えていても、毎月の負担は予定通り10万円で成り立つことになるんです。
その反対に、総額が3,000万円以下でも管理費等の合計が30,000円を大きく超えると、毎月の負担は増える場合もあるわけです。
ちょっとわかりにくいかもしれませんが、ここをちゃんと抑えておけば、毎月の住居費が大きな負担とならない設定ができるはず。
物件の価格やリノベーションの価格、そして総額といった項目は皆さん注意していますが、毎月の住居費の設定を超えないという視点も重要です。
このように物件価格、物件の面積、リノベーション費用、そして管理費などの3つの諸経費をそれぞれ連動させながら総予算を検討しないと、正しい全体予算は把握することが難しいはずなんですね。
このあたりがあいまいだと、予算の中で納めたはずなのに、なぜか負担感が強い・・・となりかねません。
仲介手数料などの諸経費の事例
最後に物件購入に伴う経費として、仲介手数料や登記に関連する費用についてまとめます。
馴染みがなくてわかりにくく、正直、私も苦手・・・
言葉で細かく説明するよりも、実例をまとめてみましたので以下をご覧ください。
なお工事費用はウッドショック前の事例のため、参考価格としてください。
細かい部分は借入先によっても違いがありますが、これらの費用はどの不動産会社で行っても出てきますし、会社によってそれほど大きな差もないでしょう。
ちなみに購入する価格と借入金額によってかかる費用も変わってきます。
結論から言えば、一般的な感覚では150~200万円を諸経費としてみておけばいいと思います。
限られた総予算の中で快適な住まいを手に入れるのがリノベーションの本質
ここまででお伝えしてきたように、「いくらかかるのか?」で考えるのではなくて、まずは無理のない総予算を設定することが大事だということがお分かりいただけたでしょうか。
たぶん、この方法はどのリノベーション会社であっても通用する考え方だと思います。何より安心ですしね。
さて、リノベーションの費用は会社によって違います。提案する内容が違っているので、単純な価格の比較はなかなか難しい問題です。
なるべくお値打ちに、予算の中でできるだけの提案をする方向性だって悪いわけではないですからね。
ただ、基本的には中古マンションが性質として持っている欠点を解決するのがリノベーションの大前提だと思っています。
・結露すること
・LDK以外は冬寒いこと
・マンションの暮らしにくさ
・階下への音の問題
などの欠点を解決することをとても重視してます。
これ、なかなか実感しにくいし、リフォーム業界ではあまり重視されていない部分。
当然、一般の方にもあまり認知されていないんですよね。それは目に見えにくい部分だから・・・。
でもここをしっかりと対応しておかないと、暮らし始めてから暮らしにくさを実感することになるんです・・・。
そういう事例を間接的にも直接的にも見聞きしてきました。当事者である住まい手さんは、本当に困っているんですね・・・。
だから耳当たりのいい説明でごまかさず、問題があることを隠さない。まずは正しく、状況を知ってもらうことが大事だと思うんです。
そうすれば、私たちが断熱補強に力を入れている理由や、特定のメーカーさんの二重床だけしか使わない理由も徐々に理解してもらえると思います。
中古マンションを快適な住まいにするためには、目立たないけれど、様々な工夫と配慮が必要です。
目先のことだけではなく、長く暮らすことを踏まえた設計提案も必要です。
だからどうしてもある程度のコストはかかってしまいますが、物件選びも含めて検討をすれば、一般的な新築一戸建てや新築マンションよりも負担は小さいものになります。
にもかかわらず、それらよりもはるかに暮らしやすくて快適な住まいにすることができるんです。
限られた予算の中では選択肢も厳しくはなりますが、中古マンションリノベーションであれば、快適に、豊かに暮らせる住まいを手に入れられます。
リノベーションは予算=価値観をどう分配するか?という住まいづくり
立地がいい場所になればなるほど物件購入費に比重が傾きます。そうなれば簡単なリフォームレベルしかできません。
でも簡易なリフォームでは、快適で豊かに暮らせる住まいとは、たぶん、なりません。断言してしまいましたが、たぶん、無理なんですね・・・。
できればちゃんとしたリノベーションをして居心地のいい住まいにして欲しい・・・。
ここで解説してきた内容はお得になる話でも、少ないコストで質のいいリノベーションの住まいを手に入れるというような都合のいい話でもありません。
そんなことはまずできません。できたとしたら、そこには必ず、ゴマカシとか手抜きというカラクリがあるんです。
大事なことは、物件とリノベーションのバランスをどうとるか?予算をどう振り分けるか?です。
だからすべての予算がいくらかかるか?という発想ではなくて、自分たちにとって無理のない予算から考えるのが基本です。
結論はなんだか当たり前な内容ですが、意外と明確に認識していない方も多いのではないかと思います。参考になれば嬉しいです。
リノベーションという方法は単に「家」というモノを手に入れることではないと思います。
そうではなくて、これから長く住まうということを考え、どう暮らしていくのか?その価値観によって着地点が変わるのがリノベーションです。
わたしはあまり「家」という言葉を使わないんですが、それは家はただのモノではなくて、家づくりの過程と完成した後の暮らしが含まれているから。
そういう複層的で長い射程で「住まい」を考えることがリノベーションという住まいづくりだと思っています。
願わくば、住まいの本質をちゃんと理解して、上質な住まいづくりをして欲しいな、と。
適切なコストをかけリノベーションをした住まいなら、きっと、いろんな意味で豊かな暮らしができると思いますね。