マンションのリノベーションとリフォームの違い

こんにちは設計の仲田です。

マンションのリノベーションとリフォームの違いってなんでしょう?

実は明確な定義はなくて、建築会社や不動産会社が好きなように使っているのが実情です。

リノベーションといった方がカッコイイとか、受けがいいから、という理由なんだろうなぁ・・と思います (;^_^A

 

ここでは私が考えるリノベーションとリフォームの違いをお伝えしますが、皆さんにはリノベーションという単なる言葉で評価するのではなく、それがどういう内容なのかを理解して欲しいな、と思います。

 

リフォームはおもにキレイにする工事

リフォームは簡単に言えば、内装の傷や汚れを修繕することを目的として行うもの。

具体的に言えば壁・天井のクロス貼り替え、床の貼り替えといった工事ですね。

またキッチン・洗面化粧台・トイレ・ユニットバスという設備を新しいものへと交換するといった工事もそう。

内装をすべて新しくやり変えて、設備機器を新規交換すれば、新築のようになりますね。

よくあるマンションリフォームの例。最小のコストできれいにして気持ちよく使えるようになるのが利点だが・・・

簡単に収納を設けたり、リビングに隣接している和室の壁を壊して大きなリビングにする、というような工事もリフォームといっていいでしょう。

 

つまり、間取り自体を大きく変えず、その住まいでの暮らし方が大きく変わらない工事がリフォームなんです。

 

なぜリフォームではなくて予算をかけてまでリノベーションをするのか?

中古マンションを購入する多くの方は、リフォーム済み物件か、あるいは購入後に必要な部分だけリフォームをすると思います。

リフォームのいいところは予算が少なくて済むということ。概ね300~500万円くらいあれば室内がきれいに、新築時のような状態になります。

でも一部の方はリフォームではなく、工事費を大きくかけて、住まいを大きく変えるリノベーションをします。どうしてなんでしょう?

それは中古マンションには下記のようにいろいろと暮らしにくい欠点があるからです。

 

室内の温度差が大きい

マンションは暖かくて快適、と言われてますが、実際にはリビングから廊下に出ると冬はとても寒く、夏は暑い状態です。

冬は寒い廊下を介して寒い脱衣室で裸になり、入浴するわけで、ヒートショックなどのリスクがある環境なんですね。

冬の北側の部屋は寒いし、窓は結露でベタベタになります。

窓ガラスの結露は窓枠も濡らす

部屋の隅にはカビが生じたりすることもある。夏は結露はないけれど、温度差はあるため部屋で過ごすにはエアコンは必須。

電気代は年々上昇していくでしょうから、光熱費の負担はかなりのものになります。

適切に断熱補強をし、間取りにも配慮をすればそうした問題は解消されるのですが、リフォームではそこまですることはありません・・・

参考: マンションリノベーションで断熱工事が必要な理由と工事の中身

はがしたクロスの裏にもカビがびっしりと・・・

 

床の耐久性が悪い

多くのマンションでは薄い合板床を採用しています。そのため非常に耐久性が悪く、築20年以上くらいの中古マンションの床は傷みが激しい。写真のように薄く表面がはがれてきます。

リフォームで同じような素材に貼りかえれば、使い方にもよるけど、将来的には当然、同じようにはがれてくるわけで。

住まいの床材の基本的な耐久性がないというのは、あまりにも暮らす人のことを考えてなさすぎると思うんですよねぇ・・・。

参考: マンションの床に必要な耐久性と防音性

合板フローリングは使い方によりまっすが耐久性に難があると思います。

 

収納が少ない

マンションって本当に収納が少ない。これは新築、中古を問わず。

部屋の隅に少しだけ収納を増やしました、というようなリフォーム程度では根本的な収納量不足を解消できません。

そもそも使いたい場所に適切な収納がないと使いにくいんですね。

 

この根本原因は、個室が大きすぎるからです。マンションは戸建てよりは面積が小さい。にもかかわらず、個室が占める割合が大きい・・・。しかもただ広いだけで無駄な空間がある設計なんです。

そうした無駄がなくなるよう、適切に、コンパクトな個室にして、削減した分を収納やリビングを広くした方がいい。

プランを根本的に見直さないと、使いにくいし、収納量も確保できないのです。

参考: マンションリノベーションの収納計画あれこれ

ある中古マンションの間取図。収納量は少ないし、各個室に行って収納するので使いにくい

 

使いにくい対面キッチン

マンションのキッチンは多くの場合、使いにくい。対面キッチンがほとんどですが、ゴミ箱を設置する場所がまずないんですね。

収納する場所もあまりなく、かなり雑然とした印象になります。使いにくいけれど、スペースが確保できないので食器棚をダイニング側に設置しているケースもあったりします。

 

こうした対面キッチンが多いのは、子供の様子がよくわかる、ということなんでしょうが、肝心の使いやすさがないようでは本末転倒ではないか?と思います。

また主に南北に長いマンションで、東西方向にキッチンを設置すると、南北を分断するしかなく、プランとしても動線の悪さや風の抜けを阻害することにもなるんです。

ダイニングに設置せざるを得ない食器棚。使いにくいことこの上ない。

 

リフォームではできない快適な暮らし

リノベーションがリフォームと決定的に違うのは上記の欠点を解決することができる点です(定義されているわけではないので会社によって違います。これはあくまでも私たちの考えです)。

そのためには一度マンションの中身を写真のように空っぽにして、下地から全て新しく計画をする必要があります。

全てを解体するフルスケルトンリノベーション。配管の更新もしやすいし、断熱補強もしっかりできる。長く、快適に暮らすことができる。

大掛かりな工事ですが、それまでのマンションではできない、「快適で、使いやすく、心身が気持ちいい住まい」へと変わります。

 

では一部の壁を撤去したりして部屋を大きくする、部分的に収納を設ける、というような工事はリノベーションといってもいいのでしょうか?

たしかに開放感が増えて、収納量も増えて片付けやすくなって今までの住まいではできない暮らしができる点ではリノベーションといってもいいかもしれません。

 

でも、そうした部分的な工事では先の欠点の根本的な解決はできません・・・。

なので名称としてリノベーションです、と提案されたとしても、最終的な住まいの暮らしやすさや快適さには大きな違いが出てきます。

 

元の間取りでは南側に個室が2つでした。キッチン配置も大きく変えて、一番心地のいい場所をLDKにした事例です。

 

以前の住まいと比べて「住み心地が大きく向上」するかどうか?それがリノベーションだと思います。

 

少なくとも上記に挙げた欠点を解決したいのであれば、模様替え、設備交換、部分的なリフォームでは解決できないということを理解しておきましょう。

 

またリノベーション工事だから安心だ、と判断するのではなく、ちゃんとその工事が中古マンションの欠点を解決する提案になっているかどうかは自分で理解することが大事ですね。

リフォーム、リノベーション、という言葉に振り回されず、快適で心地のいい住まいを求めるのであれば、ちゃんとした内容のリノベーションをすることをおすすめしますね。

くの字の形をした物件の施工例。88㎡と広めですが、エアコン一台で快適に暮らせます

 

築35年の物件リノベ事例。大きな梁が難点でしたが、快適な空間に。リノベーションは古い物件ほどやりがいがあったりします。