マンションリノベーションするなら配管はすべて新しくするのが鉄則!
設計の仲田です。前回は解体工事について、いろいろと解説しました。
解体後は、いよいよ工事が始まりますが、まず最初にするのが、配管工事。
せっかくマンションリノベーションをするなら、給水、給湯、排水といった配管は、漏水リスクを減らすためにもすべて新しくやり替えたい。
実際、関東と関西で同じようにリノベーションをしている工事仲間からは、古い配管を更新しなかったことによる漏水事故の事例もいろいろ聞いていて、そういう話を聞くと、やっぱり、配管は絶対更新しておきたいですね。
では具体的にどういう部分の配管をやり替えるのか?ということも含めて、詳しく確認していきます!
墨だし作業
配管工事の前に、どこに、どういう風に配管を持っていくのか?位置を決める必要があります。これを墨出し作業といいます。
計画した図面をもとに、給水管、給湯管、排水管を立ち上げる位置をマーキングするわけです。
まずはレーザーを使って、基準となる軸を決めます。前回、解体作業後に現況の寸法を再度計測する、と解説しましたが、その際にわかった採寸誤差を修正し、マンション自体の施工精度からくる躯体寸法のズレも考慮して基準を決める必要があります。
墨出し作業は、事前準備がとても大切。現場であーでもない、こうでもない、とならないように。
「そんなの当たり前ではないの?」って思うかもですが、建築工事ではとにかく、事前準備をすることがいろいろあります。
で、経験が浅かったり、管理能力が足らないと準備不足で職人さんにも大きな迷惑をかけることになったり、工事も円滑に進みません。とくに一番最初の基準となる位置を決める作業は重要です。
なので、N.style建築工房では、設計者(わたくし、仲田のことですね)が、必ず墨出し作業に立ち会い、指示をします。
私たちの場合は二重床工法を採用しているので、どの範囲までを二重床にするのか?その位置もコンクリート面にマーキングします。
そして、基準となる壁位置もいくつか出します。主に、水回りの位置ですね。それらの壁位置から給排水管の位置をマークするのです。
既存の配管は再利用せずに撤去する
墨出し作業が完了したらいよいよ配管を新しくします。
下の写真は古い配管が残ったままの状態。ちなみに、この状態でも排水管や給水給湯管には大きな傷みもないので、部分的に使おうと思えば使えます。
ただ、冒頭でもお伝えしたように、漏水事故が怖い・・・。もちろん、今すぐ漏水、ということはないし、状態も良ければ問題なくずっと使える可能性もなくはない。
でも、仮に、この古い配管を一部再利用して、そのどこかで漏水が生じた場合、それはだれの責任になるのか?
これ残念ながらですが「それは古い配管部分なので、当社の責任ではありません。有償で修理をします」という返事になります。
う~ん・・・とはいえ、なんだか釈然としませんよね・・・。
ふつうならそんな漏水リスクがあるなら、リノベーションでは古い配管を再利用しないんでしょ?と思うかもしれません。
でも一口にマンションリノベーションと言っても、配管をすべて新しくやり替える工事は、たぶんですけど、あまり一般的ではないと思われます。
どうしてかというと、やはりそれは、コストの問題があるから。限られた予算で優先しがちなのは、やっぱり目に見える部分。
だから既存の壁、天井、床で再利用できるものはなるべく壊さないほうが、廃材も出ないし、配管だって再利用した方が確実に安上がりです。工事の手間も少なくなってコストを抑えることができます。
それはプロなら交換すべきではないの?という意見は、もちろん、その通りで、正論だと思います。
でも、限られたコストの中で要望を実現するために既設利用をするというやり方が、必ずしも悪いとも言い切れない面もあるんですよね・・・。それに、必ず漏水する、というわけでもないので・・・。う~ん・・・判断が難しいですね。
ここはリノベーション会社の姿勢とか考え方が出るところですが、私たちとしては、せっかく大規模にリノベーションをするなら、やはりこの点についてはできる限りリスクをなくしたい。
ということで、私たちのリノベーションでは、下写真のように、タテの配管だけを残してあとはすべて撤去処分します。なお、写真をよく見ると、少しだけ横に伸びて配管が残ってますが、これまで撤去してしまうと、上階からの排水が出てきてしまうので、これはひとまず仮の状態で残しておきます。
漏水リスクをなくすためには排水管をすべてやり替えることが大事
タテ管は上階からの排水を下へと流すための排水管で、ちょうど床の上で横に接続するための継ぎ手部が飛び出ています。ここに新しい排水管を接続しなおすわけですね。
なお接続する排水管は耐火仕様にする必要があります。
リノベーションでは水回りの位置も大きく変更することが多いため、新しく、シンプルに、無理のないルートで配管できる利点もありますね。まあ、ここは施工的なお話なのであんまり気にしなくてもいいですけど(笑)。
このように排水管を全てやり替えているので、仮に漏水事故がおきたら、間違いなく、私たちの責任。でもこの方が、施工する私たち自身も安心できるという面もありますね。
さて、当然のことですが、水が排水されるためには勾配がついていないと流れていきません。なので、この排水の経路の長さが長くなると、勾配が必要となるわけで、高さが必要になります。
二重床工法なので、床下地の下に排水管を配置はできますが、この高さがあまりに高いと梁と床との間の高さや天井の高さが低くなるので、床に段差を設ける場合もありますね。
そういうことを考えると、タテ配管からあまり離れた位置に水回りを配置する計画をしない方がいいわけですが、そういう高さのことを踏まえて検討できると、リノベーションプランの可能性が広がります。
つまり配管計画について、工事の内容もよくわかってる必要があるわけです。
参考「マンションリノベーションのプランレベルは配管工事のことが分かっているかどうかで決まる!?」
給水給湯管も新しく樹脂配管に切り替える
給水給湯管も当然、新しくするのですが、MBと呼ばれる玄関横のスペース(ガス給湯器が設置されている場所ですね)から室内に配管が引き込まれています。
MBスペース内がコンクリートブロックで作られていて、その一部に穴が開いていて、そこから室内へと配管があるパターンだと、比較的簡単にやり替えることができます。
また、比較的新しいマンションでは、「さや管」と呼ばれる、中が空洞の配管を通って、樹脂配管を室内に引き込む方式の場合もあります。
将来的な配管交換が比較的やりやすいとされていますが、状況によっていろいろですね。
物件によって、そうした引込方には違いがありますが、どんなパターンであっても、MBスペースにある大元の給水管、水道メーターから先の配管を新規更新するようにすることが肝心です。
このあたり、ちょっと説明だけではわかりにくいですね・・・(;^_^A
古い配管を使うことがないようにする、ということを念頭に工事をする、ということが分かっていれば、問題はないんですが、そういうことを工事会社がわかっていても配慮をするかどうかは別問題ですしね・・・。
なお、古いマンションの場合に、コンクリートに埋め込まれていてどうしようもない場合もあると思いますが、そういう場合を除いて、できる限りやり替えます。
たいていの場合は何とかなるはずですけどね・・。
ちなみに下の事例はコンクリートの中に配管が埋まっていた物件。給水管は鉄製でコンクリートの中に埋まっています。
「ああ、これだと配管は交換できないか・・」
と思いがちですが、この配管は写真の奥のコンクリートブロックの下から配管が引き込まれている状態。
なので、奥の引込部分から新しくやり替えることができました(古い配管は切断して利用しないようにしました)。
ただ、こういう状況の場合、配管を交換できない、という判断をしてしまう会社も一定数あると思いますが、こればかりは、その会社の力量と考え方次第。
会社の規模が大きいから大丈夫、というわけではなかったりしますね。
そして、これはとあるお客さんから聞いた話なんですが、そもそもの給排水管がどうなっているのかをよく知らないまま、「古いマンションは配管が埋まっているので交換できません」という説明を自信をもってする業者もあるくらいなんですよねぇ・・・(;^_^A
基本的には新しく配管をやり替えることは、すべてではないですが、多くの場合は可能です。
このように配管をすべて新しくすることで、漏水リスクは格段に減りますから、基本的にはリノベーションをするなら配管更新は是非して欲しいところ。
そうしたことを行うかどうかは業者に事前に確認した方がいいと思いますね。そして工事中にちゃんとやっているかどうか確認もしましょう。
先ほどの例のように適当な説明をする人もいますし、配管を新しくする、というのが全部の配管という意味だということを理解していない業者も中にはいるので、確認の仕方もいろいろと注意が必要です。
いろいろお伝えしてきましたが、最後は配管に圧力をかけて接続不良がないか、確認。ここまでしておけばまず漏水する心配もないわけです。
20年、30年、あるいはそれ以上の時が経過している中古マンション。そこからさらに30年、40年暮らすことを考えると、やはりこのタイミングで更新しておく方が安心ですよね。
こういう視点があると、中古物件の購入費とマンションリノベーションの費用とのバランスも考えるきっかけにもなると思います。
そうすれば、配管更新の予算も含めて、適切な価格帯の物件を選択することもできると思うんです。ここはぜひ、検討して欲しいですね。