75㎡のマンションリノベーションを30坪の一戸建てと比較する
設計の仲田です。戸建てと比べると基本的にマンションって床面積は小さめです。
これまでに私たちが行ってきたリノベーションでは60~100㎡と幅広いんですが、70~75㎡くらいが事例としては多い印象ですね。
坪換算すると70㎡は約21.2坪、75㎡では約22.7坪になります。
都市部の一戸建ての場合、何となくですが、30~35坪くらいが多いと感じますから、30坪と比較しても8坪前後の違いが出ます。
そんなに違えば、マンションは狭くて暮らしにくそうだな、って思いますよね。
単純な面積で比較したらそういう判断になるのも無理はありません。
でもうまくリノベーションをすれば、普通の30坪の住まいと比較しても機能としてはちゃんと同じ用途で暮らせるし、小さい、という感覚は感じにくくなるんですね。
今回は2階建ての30坪の戸建てとマンションの大きさの比較をしてみたいと思います。
戸建てのクローゼット収納は無駄な計画が多い
30坪の間取りで検索すると、いろんな事例が出てきますが、多くの場合、なかなか暮らしにくそうな計画ですね (;^_^A
あまりに暮らしにくそうな間取りと比較検討するのはフェアじゃないと思うので、そこそこシンプルで、まあこれならよくある感じかな、というプランを参考に(ひらたくいうとパクリ)簡単に作図をしてみました。
1階、2階とも15坪で総2階の住まいです。広めのシューズクロークがあり、タタミコーナーなんかもあって、ぱっと見はそんなに悪くない感じ。
でもまあ細かい突っ込みはたくさんあるのでしません(笑)。分譲住宅とかにありそうな感じです。
まずこうした間取りにおいて、クローゼットスペースってだいたい各個室に設けています。
でもこういう事例で計画されているクローゼットの奥行って無駄に深いんですよね。衣類を収納する場合って基本的には60cmあれば十分なんです。
また衣類って、ステンパイプに掛けて収納してます。ということは収納の容積ではなくて、「長さ」がどれだけあるかで収納量が決まるわけです。
なので上記の間取りで計画されているCLOの長さがどれくらいあるのか?が大事なんですね。
2階の洋室3の角にある3畳の物入(WCLO)をみると容積がたくさんあってたっぷり収納できそうですが、ステンパイプがL型になっているので、角の部分は重なりますし、衣類を収納するためには奥へと出入りする必要があるので見た目の面積よりも収納量ってあまりない。
結果を言えば、この場合、2階にあるCLOの衣類を掛けられる長さは約8mほどの長さ。
これ、下図のように両側にステンパイプがある計画をすれば、容積的には、2マス分少なく済むんです。
下図の青い部分を見ると比較しやすいかも。洋室1と洋室2にあるCLOをなくしても、青色部分に集約すれば同じ収納量を確保できるというわけです。
階段と廊下は無駄な空間でもある
階段と廊下って、一般的な住まいの場合には、単なる通路としての機能しかありません。
この部分は各個室が利用さえできれば無しでもいいとも言えます。もちろん、この住まいではなくすことはできませんが、ある意味無駄ともいえる。
なお優れた住宅は通路としての機能だけではなく、空気の流れが考えられていたりして、上下階の温度差を軽減するような視点で計画されていることもある。
そうした場合は階段に大きな意味も出てきますが、多くの住宅ではそういう要素はないですし、この家の場合、冬は階段から暖気が2階へと上がって1階はなんだか底冷えする、という住まいになるんじゃないかな、と思いますね。
個室が無駄に大きい
洋室1と洋室2は子供室として計画されていると思います。洋室3は主寝室といったところでしょう。このサイズ感ってたぶん、普通なんだと思います。
ここからは考え方、価値観によって判断が分かれる話になりますが、これらの個室の大きさって本当に必要でしょうか?
もちろん、広い方が何かと使いやすい。でもそれらの部屋に求めることって基本的には就寝することが一番の目的。
子供室の場合には勉強する場所、という使い方もあると思いますが、これらの目的を満たすだけならもっと小さくても十分なんですね。
実際、子供室として使う場合、3畳前後で十分成り立つ計画ができます。ベッドと机の設置の仕方をちゃんと考えるとかなりコンパクトに計画しても成り立つんです。
これは体感しないとなかなかわかりにくい部分もありますが、そこで過ごす時間、使う時間を考慮したときに、必要以上に大きくなくてもいいのではないか?と思いますね。
で、そうしたことを踏まえると、このプランの洋室1はすべてなくし、洋室2のボリュームで子供室を2つ分計画することも十分できる。
個室として2部屋が確保され、就寝も勉強もできるわけで、ちゃんと機能する。
これは主寝室も同様。寝るだけ、という方も多いですからね。8畳とか10畳とかそんなに大きくなくてもよいのではないかと・・・。だからまだ小さくすることも可能。これらを整理すると下記のようになる。
つまり、上のグレー部分の面積がなくても、各スペースが使えるようにすれば成り立つ可能性があるわけですね。
ちなみにグレーの面積は6.75坪あります。
30坪の戸建てとの差はそんなにない
で、もう一度1階の間取りを見てもらうと、階段の前のあたりがちょっと無駄なスペース。現実にはそのスペースをなくすことはできないんですが、タタミ1畳分程度はなくてもいいわけです。つまり0.5坪減らせる。
ということは、最終的に30坪の戸建てが持つ用途が、「30-6.75-0.5=22.75坪」、つまり、約75㎡で実現できるとも言えるんです。
ちょっとゴウインでしょうか?・・・(;^_^A
もちろん、「普通の」75㎡のマンションの間取りではこの考え方は無理。だって普通のマンションもまた、暮らしにくいですからねぇ・・・
また、リノベーションすればすべてそうなる、ということでもない。やはりいいリノベーションプランでないとどこかに無理が出てきますからね。
実例を掲載したいところですが、いろいろ難しいので知りたい方は事務所に来てね(笑)。
さて、ここでお伝えしているのは可能性の話です。
暮らす、住まう、ということをすごくじっくりと考えて、広さという尺度を先入観なく評価のし直しをする。
そして長い目で見て、ずっと必要な大きさであるのか、とか、
子供、もっと広く言えば家族にとってのいい住まいって何だろうか、
ということをすごく丁寧に、じっくりと吟味し、自分たちの暮らしが成り立ちそうなら、75㎡という大きさって思っている以上に広いんです。
さきほどの30坪の一戸建ての住まいが持つ要素と変わらない用途、機能を持ち得ると思いますね。
で、そうしたことができると、経済的にも、精神的にも、家族の関係も、きっと豊かに暮らしていけると思います。
過剰に大きさを求めすぎないことがいい住まいづくりにもなります。
あ、最後に補足をしておきますと、これは単純な面積が小さければいい、という話ではないんです。
人によって、求める大きさ、必要な大きさって暮らし方、仕事の状況、価値観で非常に幅があります。
ここでお伝えしたいのは戸建ての感覚でこれくらいは必要だよね、っていう漠然と思っている面積で住まいの条件を評価するのはちょっともったいなくないですかねぇ・・・ということなんです。
小さいことによるマイナス面はありますが、そうした単純な見立てではなく、限られた条件の中で可能性を見出す考え方の方が、最終的には幸せになれるんじゃなかろうか、と。
ということで、少々、いや、かなり暴論? (;^_^A
これが暴論と思う方はやっぱりそれなりに必要だと思う大きさを確保できる住まいづくりをした方がいいですね(笑)。
可能性を見出してくれたらうれしいです。
あ、最後に一つ。お気づきの方もいるかと思いますが、30坪の戸建てをうまく設計したら、さすがにこういう評価にはなりません。
やはり絶対的な広さに余裕があったほうが、計画がしやすくなる面はありますから・・(;^_^A