マンションリノベーションの玄関事例あれこれ
設計の仲田です。マンションの玄関って狭くて使いにくいですよね。収納が少ないから、廊下にモノがあふれてたりもしますしね (;^_^A
でもリノベーション事例を見ていると、既存の玄関のまま、という場合も意外と多かったりします・・・。
せっかくリノベーションをするなら、玄関もちゃんと手をかけたいところ。
デザイン的にはいろいろな好みがあるとは思いますが、以下のいろいろな事例を見ていくと、マンションリノベーションで玄関をどう変えたらいいのかのポイントがわかります。
目次
使い勝手が格段にあがる土間収納
戸建てよりも面積が小さめなマンションですが、可能なら土間収納を設けたいですね。
写真は61㎡とコンパクトなマンションの土間収納の事例。玄関入って右手のスペースに奥行約2m弱、幅80cmくらいの細長い土間空間を設けました。
タタミ一畳分くらいの面積ですし、奥が深いスペースなので使いにくいのでは?と思うかもしれませんが、意外と使えます。
奥行が深いので、奥にはベビーカーなども置けますし、壁面に棚を設けるなどすればいろいろ使いやすいですしね。
また視線が横に広がるので、狭さを感じにくい、というか、広いって感じられます。
物件によっては風が抜けて明るい空間に
物件にもよりますが、窓があると写真のように、明るい土間空間にもなります。
幅が広めにとれると自転車を置くこともできるし、奥の方には分別ゴミなどを一時的に置くスペースなどにしてもいいですしね。
人の目が気になる場合は手前にロールスクリーンを設置すれば来客時でも簡単に目隠しできるので、お手軽です。
またユニットバスを隣に設置できれば、窓を付けることで、南北に風が抜けるようになります。マンションでもこんなことが可能なんです。
また、一般的なシューズクロークは建具がありますが、こうした土間収納の場合ならオープンタイプにした方が使いやすいですね。
なお傘をかけるステンレスバーなどを壁につけたりすることも多いですね。
土間収納が取れなくても広めにしたい
要望と物件状況によっては土間収納が計画できない場合ももちろんあります。でも、元のサイズよりは大きめにしたいですね。
マンションはコンパクトだから玄関が小さいのは仕方ない、としてしまうのはちょっと残念ですしね。
下は土間収納がない代わりに、戸建てのように広く玄関を設けた事例。右壁の一部は天井までの姿鏡になっているので、より広さを感じます。
壁や天井を木の板張りにすると、マンションとは思えない空間になりますね。
玄関を広めに計画するとスペースがちょっともったいない、って思うかもしれませんが、全体とのバランスの中でうまく計画できるなら可能な限り広めにしてます。
意外と出入りの時って家族が集中しますし、買い物袋を持ってたりことも考えると広い方が具合がいいんですよね。
玄関に網戸を設けることも
角部屋で物件の状況によっては、家族以外の人が玄関前を通ることがほぼない場合もあります(宅配業者以外は)。
そんな時には、気候のいいときに、窓を開けて通風をとる、という使い方を希望する方もいます。
でも開け放しだと気になるのが「蚊」ですね。何もないと蚊が入り放題・・・(;^_^A
なので玄関に網戸を設けることもあります。
開き戸タイプの網戸は使わないときには開け閉めがいちいち面倒なので、引き戸にするといいですね。
なおその場合、吊りタイプで計画することになるのですが、どうしてもちょっとしたすき間が上下に生じてしまいます。
なので毛足の長い「モヘヤ」を取り付けて、できるだけ大きなすき間をなくしてます。
玄関先の手すりは年齢に関係なく便利
手すりを付けたい、という希望は高齢の方のため、という認識が一般的にはあると思いますが、実は年齢に関係なくあると意外と便利です。
これは靴を脱ぐときをイメージして欲しいんですが、玄関から上がる際には、壁に手をついて靴を脱ぐ人って多いんですよね。
で、別にそれはそれでいいんですが、そうしていると壁が黒ずんできたりするんですね。そういう意味でもタテに1本設けるのはおススメです。
なお、手すりはちょっと長めに設けると、意匠的にも手すり感がそんなにしなくて、感じがいいかな、って思いますね~。
玄関は必ず区画する
土間の有無や大きさに関係なく、玄関部分は建具で区画したい。その理由はマンションって玄関ドアからの冷気や熱気がひどいから。
基本的に、中古マンションの玄関ドアってスチール製のものが多いので、断熱性能はあまり高くないんです。だから寒いし暑い・・・。
玄関部分を区画すれば、そうした冷気や熱気が室内につたわるのを和らげてくれます。
冬の場合、区画をしなければ、廊下部分がとても寒くなります。多くの場合、リビングと廊下を区切っている事例がほとんど。
そのためリビングの冷暖房は廊下にはあまり伝わりません。ドアを開けると床はヒンヤリ。廊下に面した洗面脱衣やトイレ、浴室は家の中で一番寒い空間になるのです。
暑さ寒さは目に見えません。なので、こういう視点は多くのリノベーションのプラン例では見ることがありません。
「マンションは暖かい」ってよく言いますが、正しくは「リビングは暖かい」です。戸建てと違って床のすき間風などがほぼないので。
でも家全体が暖かいわけではありません。マンションは家の中に温度差がある、という事実はしっかりと知っておいた方がいいと思いますね。
参考ブログ
「マンションリノベーションの間取りで失敗しない具体的なポイント」
コート掛けスペースも便利
スペース的に計画できるかどうか?という点もありますが、コート掛けの場所があると便利ですね。
一般的なステンパイプの位置って1.8m程度につけたりしてますが、コートが長いと言ってもそんなに高い必要性はないです。
なので棚の高さをちょっと低めにして、カバン置き場や帽子なども置けるようにするとより使い勝手がいいと思います。
お子さんがいる家庭であれば、幼稚園、保育園などのカバンや帽子等もここにまとめておくとすっきりしますね。
なお衣類は集約するから必要ない、という方もいるかもしれません。使い方によって必要かどうか?ということの検討は人によっても変わってきますね。
まとめ:マンションの玄関のポイントは2つだけ
他にも細かな工夫や事例はいろいろとありますが、基本的にはこんなところです。ここまでの事例をまとめるとポイントは実は2つだけ。
一つは収納量を増やす、ということ。え?そんな普通のことって思いますよね(笑)。
それに加えて、注意点が一つ。それは靴の収納量を増やすということだけではなくて、プラスアルファの要素も含めて増やす視点が欲しい、ということです。
靴だけなら土間空間にする必要性はないですからね。
土間スペースによって、ベビーカー、自転車などの置き場、ごみの仮置き場といった便利な使い方ができるし、玄関とは違うけど、近くにコート掛けスペースを設ければ衣類も収納できる。
つまり、靴を収納する、という機能以上の要素を持たせることで、使い勝手のいい玄関にしようね、ってことなんです。
だから靴がたくさん収納できる、ってだけの計画だとちょっと残念だよなぁ・・・って思います。
で、もう一つは温度差を軽減させるという視点。使い勝手や見た目はわかりやすい部分ですが、目に見えにくい温度差という不快感については多くの場合、配慮がされていません。
この対処方法は玄関部分を区画する、というだけですので、それほど難しい技術がいるわけではないですしね。
なお、プラン的な工夫に加えて、本質的な部分として、貧弱な断熱性能も高めておく必要があります。詳しくは下記のブログ内容を見ていただけたら。
参考ブログ
「暮らしてから後悔しないためにも絶対しておくべき工事とは?」
せっかくリノベーションするならこういう視点で玄関を計画すれば、格段に便利で使いやすく、しかも開放感もあったりします。
ぜひ、質の高い玄関スペースを計画してみてくださいね!